植物の根からは、糖、アミノ酸、さらにビタミン類等の栄養物が分泌されるため、それらを求めて数多くの微生物が集まります。 それら微生物の中で、貧栄養の森林土壌(写真)をすみかとする根部エンドファイトという菌類がいます。 この菌類は、土壌中から根の細胞内へ侵入し、表皮と皮層細胞をすみかとします。 植物は、この菌類の侵入を受け入れることで、植物単独では利用できない窒素やリン酸の供給をエンドファイトから受け、そのため、貧栄養条件でも生育出来ます。 一方、見返りとして、光合成産物としての炭素源をエンドファイトに提供し、お互いが相利共生関係にあります。 さらに、このエンドファイトがすみついた植物は、病気に強くなることも知られています。 このエンドファイトは、化学農薬のように病原菌に直接作用し、増殖をストップさせることはありませんが、病原菌よりも先に植物にすみつくことで、植物を守っているようです。 いわば、予防接種のような効果があると考えています。 |
このように自然界では、植物も微生物と相互依存の関係を保ち、お互いに繁栄してきました。 植物の生育は微生物に支えられていると言っても過言ではありません。
しかし、近年、人間の営みによって、自然な回復は望めないほど地球環境が急激に破壊されています。 そのため、微生物の支えを失った植物が次々に枯死し、砂漠化等が進行しています。 これら砂漠等の緑地化や熱帯地域での植林、 さらには農耕不適地での作物・果樹栽培等にもエンドファイトと植物の共生に関する研究成果を役立てたいと思います。 |
左:エンドファイトがすみつき病気に強くなったナシ苗 右:エンドファイトがすんでいないため枯れてしまったナシ苗 |
・病気にならなかったナシ苗の根の横断面。 表皮と皮層細胞にエンドファイトがすみついている(矢印) |
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